作編曲者のための
尺八講座

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ーーー …っぽい音 ーーー

この章では、尺八独特の音と言いますか、
「らしい」テクニックをご紹介します。

最初にお断りさせていただきますが、
以下の説明では、

1尺8寸管を基準
として

お話させていただきます。

これは、同じ名前の「手」でも、
尺八の長さによって音の高さが異なるような場合があるからです。


----摺り上げ摺り下げ----

まず手始めに
「摺り上げ」、「摺り下げ」。
(スリアゲ、スリサゲ)


これは音的にはポルタメント効果を持ちます。
こんな感じです。

フルートのリングキーなどに比べると、
格段に自由度が高いことが判ります。

これは、尺八という楽器が、
生身の指で手孔を押さえるという構造であり、
そのため、
じわりじわりと手孔の開閉を
行うことができることによって音高を制御できるからです。


----沈り浮り----

上のようにかいて、「メリ」「カリ」と読みます。
これは上記ポルタメント的な音を出すときの
もう一つの手法です。

「沈り(メリ)」の場合は顎を引き、
さらに唇のテンションを下げ、
尺八の唄口と唇の間が狭くなり音が低くなります

「浮り(カリ)」の場合は沈りとは反対に、
顎を突き出して、
さらに唇のテンションを上げ、
尺八の唄口と唇の間を広くして奏します。


お聴きのように「メリ」は、
半音、時には1音近く
音高を下げることができますが、
「カリ」は、
せいぜい半音高くすることができる程度です。

また、
実際に尺八でポルタメント的な効果を出そうとする場合、
実際には「運指」と「沈り浮り」
を微妙に織り交ぜて
目的の音を出します。

このようにして、音を発生することができますので、
こういう曲も難なく(?)演奏できます。

ホテルカリフォルニアより
(一尺六寸管)

(打ち込み音源:by JuJu)
タマにライブでヤルよぉ〜

余談ですが、
尺八初心者の出す音程は、
半音程度低い音で、かつ安定していません。

その理由は、
初心者の場合、唇の引きが弱く、
かつ、息の流れが乱れており、
唇と唄口の距離を離すと音が出なくなってしまいます。

そのため、音を出すために、
唇と唄口との距離が短く、
結果的に「沈り」状態に陥っているのです。

年期が入る頃にはピッチが安定してきます。

発音原理が同じフルートも、
ある程度、このような傾向が見られますが、
尺八に比べると程度は小さいようです。



----コロコロ----

コロコロとは変な呼び名を思われる方がいらっしゃると思います。
とにかく聴いてみて下さい。
何で「コロコロ」か、解ると思います。


この手はベースをC(ド)として、
上1音半、下1音までポルタメントで表現可能です。
(1尺8寸管の場合)

古典的な尺八に
コーロコロコロコロ…リン
と言う手がありますが、これは応用です。


なお、オクターブはありません。

コロコロと摺り上げ摺り下げ、
沈り浮りをイロイロ使うとこうなります。

弦声竹鍵アルバム
「Progressive慧Ver1.00」より
「花」のエンディング部分。
 
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なお、最初にも述べましたが、
尺八の「手」の名前とは、
基本的には手の動きと音の特徴を指しており、
どの音程でもできるものではありません。

コロコロの場合
1尺6寸管ではD(レ)がベースとなり、
1尺8寸管ではC(ド)がベースですが、
2尺管ではB♭(シ♭)がベースとなります。

1尺6寸管、1尺8寸管、2尺管、

----カラカラ----

コロコロのオクターブ上の似た音として、
カラカラがあります。
この手はベースをC(ド)として、
上半音、下1音までポルタメントで表現可能です。
(1尺8寸管の場合)


なお、やっぱりオクターブはありません。


以前、見た楽譜で、
どう見ても1尺8寸管で演奏する曲で、
G音に「コロコロ」と書いてあったことがありました。

作曲者は
「コロコロ」と「トリル」

の、区別が付かなかったのだと思います。

まぁ、そのときは、
トリルでやるしかないので、
トリルでやりましたが…


こういう場合、
尺八奏者としては
複雑な心境となりますです…


(2006.03.31)
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